自宅の改修事例について、省エネルギー性能の検討をしてみます。~改修のすすめ~ その3

外皮性能を知ろう

 まず、新築当初(改修前)の外皮性能を計算します。改修前の状態でどれだけの性能があるのかをしっかり把握する必要があり、図面や資料がない場合は、現地調査が必要になります。図面や資料があった場合でも、その通りに施工されていないことも多く、現場確認は必要になるでしょう。今回の場合は自宅なので大丈夫ですが、正確な診断をするためには、詳細な調査が必要になります。
 外皮計算の手順を以下にまとめます。
  1. 図面から面積・長さ等を拾う
  2. 部位のU値を計算する
  3. 日射の計算をする
 現在は、UA値[外皮平均熱還流率]とηAC値[冷房期の平均日射熱取得率]の基準が地域別に決められており、その基準により住宅の断熱性能を評価するようになっています。私の住んでいる地域は「5地域」になりますので、等級4という基準で「UA値=0.87」「ηAC値=3.0」という値が決められています。このUA値は、将来のことを考えると低すぎる基準だと個人的には考えています。また、あまり話題に上がらない「夏の日射遮蔽」と「冬の日射取得」は、住宅の快適性に大きく影響しますので、しっかり設計しなければいけません。
イラスト_日差し

1.外皮仕様

 それでは、これから具体的に新築当初の仕様について説明していきます。まず床部分は床大引間に断熱材を充填しています。次に壁は、壁パネルを用い柱間に充填する壁充填断熱としています。あと、屋根・天井は、天井部分で断熱材を入れる天井断熱としています。最後に窓はアルミ樹脂複合サッシとしています。
  •  → フェノール系断熱材 厚さ40㎜充填
  •  → 硬質ウレタンフォーム2種1号(断熱パネル) 厚さ50㎜充填
  • 天井→ ロックウール 厚さ75㎜敷き込み
  •  → アルミ樹脂複合サッシ Low-Eペアガラス
 先にも書きましたが、やはり、天井の断熱性能は心許ない仕様だとつくづく思います。
断熱イメージ

2.外皮計算結果

 実際、外皮計算をした結果ですが、以下のようになりました。
  • UA値 = 0.71 < 0.87
  • ηAC値 = 1.6 < 3.0
 結果としては、省エネルギー性能等級4の基準はクリアしていることが分かりました。等級4をクリアしていてても、生活していての実感としては、夏は暑く、冬は寒いという感じです。UA値というのは、各部位での熱損失を全体の外皮面積で割り、平均化しているため、UA値の数値だけでいろいろ判断するのは危険だと言えます。あくまでも一つの指標として見るようにしなければいけません。では、各部位での熱損失を見てみることにします。

3.各部位での熱損失

 それでは、各部位での熱損失(q値)の値を確認してみます。断熱改修を計画する場合は、各部位でどの部分が弱いのかということをしっかり把握しておくことが大事です。
  • 天井      44.2[W/K]
  •        95.3[W/K]
  •        28.7[W/K]
  • 窓       99.6[W/K]
  • 土間      22.8[W/K]
 上記の数値を確認すると、からの熱損失が非常に大きいことが分かります。しかし、の方が面積がかなり小さいにもかかわらず、これだけの熱損失があるということなので、を強化すれば効果が高いということになります。やはり、窓改修必須かと思います。意外に玄関などの土間からの熱損失も大きいことにびっくりしました。
あたたかい家
 これから、住まいの改修を考えたい方、また新築で住まいを考える方も、是非、外皮計算をしてもらいましょう。なんとなくではなく、根拠のある住まいづくりを考えていきましょう。
 次回からは、改修後の内容についてまとめていきたいと思います。もし興味がおありでしたら、ご覧ください。コメント等もあれば、是非お願いします。
設計図

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